東北絆まつり
東北六県の県庁所在市の祭りが一堂に会し、各市持ち回りで開催される「東北絆まつり」が6月17日と18日青森市で開催された。東日本大震災からの復興を目指し開催されてきた「東北六魂祭」を引き継いでの祭りである。
コロナ過で中止されていた公道パレードが4年ぶりに復活し、コロナ前のねぶた祭りのような賑わいが青森市内に戻ってきた。
盛岡さんさ踊り、山形花笠音頭、仙台スズメ踊り、福島わらじ祭り、秋田の竿灯まつり、と青森ねぶたは、3台のねぶたがパレードに参加した。竿灯は当日の強風の中、懸命なパフォーマンスを披露し沿道の観客を魅了した。
青森市民には見慣れたねぶた以外、さんさ、花笠、スズメ踊りの流し踊りは、それぞれのミスを先頭に踊り続け、軽快なお囃子と相まってそれぞれの都市の祭りの魅力を十分にアピールしていた。わらじ祭りも大きなわらじの上で大見得を切りながら沿道に愛想を振りまき、実にシンプルで十分楽しめた。トリを務めたねぶたは新人による新作1台と、昨年の受賞ねぶたでワラッセに展示されている2台の3台が参加し、新体制の祭り本部役員団、ミスねぶたに続いてハネトや囃子方などが練り歩く、本番さながらのいつもの青森ねぶたである。沿道の観客はコロナ前のねぶた祭りの熱気を感じ、今年のねぶた祭りに対する期待を膨らませたことだろう。
18日のパレードの折り返しでは、まるでオリンピックの閉会式のように各参加者が入り乱れて、各都市の祭りの成功と再会を約しての交流をしていたに違いない。来年はとりあえず仙台市での開催が決まったようであるが、それ以降は未定とのことである。
パレードが終わった会場は観覧席などの後片付けに祭りの余韻を惜しむかのように風が吹き、まるで、ねぶたのナヌカビのようであった。青森ねぶたは8月の本番に向け、ねぶたの制作、囃子の練習などが佳境を迎え、街に一時のじゃわめきが戻ってくる。
今年のねぶたは、主催3団体の代表が交替し、新体制の下で、コロナ前のようにハネトの参加などの様々な規制がなくなり、観光客の増加なども見込まれ、ここ数年にない盛り上がりが期待される。
その中で新たに、7代目ねぶた名人に竹浪比呂央が推されることが決まった。11年振りの名人の誕生である。研鑽と、探求により、独自のねぶた観を確立し、ねぶたの領域を広めてきた竹浪師の名人位就任は、ねぶたファンが待ち望んできた慶事である。今年のねぶたは「牛頭天王」、「強弓 島の為朝」の2台だが、出来栄えが楽しみである。
青森観光コンベンションのHPで、今年の23台のねぶたの下絵が公表された。まもなくパンフレットも配布されるだろう。
東北絆まつりに参加した、青森市役所のねぶた「~主従の絆~牛若丸と弁慶」をこれまで五所川原立佞武多の制作者であった福士裕朗氏が作り、青森ねぶたでのデビューである。かつて制作に参加していたという我生会の流れを汲んでいるように見える。
他に、北村隆の門下塚本利佳氏が「鎮西八郎為朝」で、竹浪門下の野村昂史氏が「大日大聖不動明王」でそれぞれデビューする。
題材が重複するねぶたもあり、師匠と仰ぐねぶた師の影響やねぶた師の創造力を発揮し、 独自のねぶたを仕上げるために日々精進していると思われ、お披露目が楽しみである。
初めての「台上げ」の感動を胸に、長いねぶた師としての活躍を期待したい。
30年の研鑽を経て、師匠と違う独自のねぶた観を確立し、8代目の新名人を目指してほしい。
昨年運行を取りやめた5台のねぶたが復活するのに加え、新規に1台の参加が認められ、今年は23台の大型ねぶたの参加が見込まれる。新人ねぶた師が3人デビューし、運行団体と制作ねぶた師の受注関係にも若干の変化が見られる。
県内の他の祭りでは、担い手不足により一部縮小や、参加断念などの現象が見られ、祭りの行く末が心配されている。
青森ねぶたも来年以降の参加台数や参加団体がどうなるかは不明であるが、紙張りや、電気配線、運行担当、囃子方など、十分に人員確保ができるかどうか、不安視する向きもある。しかしそこは青森ねぶたである。当面は何とか乗り切れるだろう。
一時話題になっていたねぶた制作小屋の問題のみならず、制作スタッフ、労働環境など、制作者側だけに負担を負わせることのない様、主催3団体を中心に、運行団体など関係者は問題意識を共有し、ねぶた祭りの有り様も含め早めに対策について議論し、備えるべきであろう。
主催3団体のトップが新たになった今年は、そのチャンスである。